園芸学会雑誌
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トマトの生育ならびに開花•結実に関する研究 (第4報)
育苗期の床土の肥瘠, 灌水量および株間が生育ならびに開花•結実に及ぼす影響
斎藤 隆今野 義孝伊東 秀夫
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1963 年 32 巻 3 号 p. 186-196

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抄録

本研究は育苗期の肥培管理操作である床土の肥瘠, 灌水量および株間がトマトの生育ならびに花芽の形成 bull;発育にどのように作用するかを実験したものである。
1. 床土の肥瘠の影響 床土の肥沃なほど苗の発育は旺盛で, 花芽の分化が早く, 花芽の分化節位が低く, 花芽分化数が多く, その発育がすみやかで, 開花•収穫期に達するのが早く, 収量が多い。
2. 灌水量の影響 灌水量を多くするとやや徒長的な生育を示して, 花芽の形成が若干悪くなり, 分化数がわずかながら少なくなつている。しかし, 分化期, 分化節位および発育は標準灌水区とほとんど変らない。灌水量を極端に少なくすると, 初めから生育は抑えられ, 花芽の分化は遅れ, 分化数は少なく, 発育が遅れ, 開花•成熟も遅れ, 収量が少ない。
3. 株間の影響株間が狭いほど初めから軟弱な生育を示して, 花芽の分化が遅れ, 花芽の分化節位が上昇し, 分化数は少なく, 発育は遅れ, 各花芽は小さく, 開花•成熟が遅れ, 収量が少ない。
4. 花芽の形成と苗の生育ならびに体内成分との関連花芽の分化は苗の発育と関連しており, いずれの処理区においても茎の直径が2.1~2.6mmの範囲において第1花房の花芽分化が起つている。
花芽の分化節位は, 一般に強剛な充実した生育を示すような処理区において低下する傾向がみられた。
花芽の形成と体内成分との関係をみると, 花芽の分化が早く起り, 分化数を多くした処理, すなわち, 肥沃な床土, 適当な灌水, じゆうぶんに広い株間が与えられた場合は, いずれも蛋白態窒素と全糖とがともに多くなつている。すなわち, 外観的には生体重/草丈の値が大きく強剛で充実した発育を示し, 内部的には蛋白態窒素と全糖とがともに多く集積される場合に, 花芽の分化が早く起り, 分化数が多く, 発育もじゆうぶんに行なわれることが認められた。

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