抄録
1. 圃場植えの二十世紀ナシを用いて, 施肥および土壌管理法の違いが枝梢の生長および異常葉の発生に及ぼす影響を調査した。その結果, 主枝の伸長は, 窒素の施用によつて促進されたが, リン酸, カリ, 石灰および苦土の施用によつてはほとんど影響を受けなかつた。また, 敷わらは枝の生長を促進し, 草生は枝の生長を減退させた。植え付け後3年目に, 施肥および土壌管理法のいかんにかかわらず, 大部分の主枝から異常葉が発生した。この際無肥料区および草生区でいくぶん発生が少ない傾向があつた。
2. さらに鉢植えの二十世紀ナシについて, 樹体の生長, 葉内の養分要素含量および異常葉の発生に及ぼす窒素, リン酸およびカリの影響を調べた。その結果, 各要素とも樹体の生長に対して顕著な影響を及ぼしたが, 3要素のうち窒素の影響がもつとも大きく, ついでリン酸の影響が大きかつた。
3要素の施用は葉内の養分要素含量にも顕著な影響を与え窒素の施用量が増すにつれて窒素およびマグネシウムの含量が増加し, 逆にカリウム含量が減少した。リン酸の施用によつて, リンおよびマグネシウムの含量が増加した。そして, カリの施用によつてカリウム含量が増加し, 逆に窒素, カルシウムおよびマグネシウムの含量が減少した。
植え付け後3年目における異常葉の発生は無肥料区, 無窒素区および無リン酸区では皆無であり, 無カリ区ではきわめて少なかつたが, その他の各区では, 肥料処理とは無関係にほぼ同程度であつた。
3. 以上2つの実験結果から, 異常葉の発生は肥料処理のいかんによるよりも, 枝の伸長量によることが大であることが明らかとなつた。