園芸学会雑誌
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挿木における不定根形成に関する研究 (第I報)
挿穂内オーキシン活性と発根との関係
町田 英夫藤井 利重
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1967 年 36 巻 4 号 p. 438-444

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抄録
本実験は, 不定根形成に関して重要な因子とされているオーキシンについて, 特に挿穂内におけるオーキシンの活性と発根との関係を明らかにする目的で行なつたものである。
1. 挿木から発根までの間における挿穂内のIAAの活性は, 挿穂切断後高まり, 根源体形成, 発根開始時に最高に達し, 十分発根するとおちる傾向が認められた。この傾向は緑枝挿, 休眠枝挿においても同様であつた。
2. 合成オーキシンによる浸漬処理の場合, キク, ベニゥッギでは茎に多量に吸収されるが, 葉には殆んど移行吸収がみられなかつた。吸収されたオーキシンは, 挿木中に減少するが, 発根時にはまだ相当量残存していた。また, ベニウツギのIBA処理では, 挿穂内のIAA増加を促進させる傾向が認められた。
3. 黄化処理したモクレン枝条の黄化部におけるIAAは, 発根前に増加し, 発根した時期には減少した。
4. マツバボタンの水挿しにおける挿穂内IAAの増加は他の樹種と同様な傾向を示した。しかし, 挿穂採取後直ちに全部の葉を除き発根しなかつた区の挿穂は, IAAの増加がやや遅れる傾向が認められた。
5. 挿穂内のオーキシンと発根との関係について本実験から断定することはできないが, 少なくとも挿穂内のIAAの活性の高まることは不定根の発現並びに発達に一つの重要な条件と考えられる。しかし切断により葉から茎へ移行する他の必須要因がなければ, さし穂内にIAAが増加しても不定根の発現は誘起されないことを認めた。
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