園芸学会雑誌
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ナツミカン果実貯蔵中の低温障害に関する生理学的研究 (第2報)
岩田 隆中川 勝也緒方 邦安
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1969 年 38 巻 1 号 p. 93-100

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抄録

ナツミカン果実を1°~1.5°Cに貯蔵すると呼吸作用に異常を生じ, やがて低温障害の発生することを前報に述べた。本報は障害発生と生理的諸変化の関連を明らかにする目的でさらに検討を加えたものである。測定は原則として目にみえる障害の現われていないものを選んで行なつた。
(1) 果皮アルベド切片の呼吸を Warburg 検圧計により30°Cで測定した。1°C貯蔵果のRQは常に6°C貯蔵果よりも高い値を示し, また pyruvate 添加によるCO2排出量の増大効果は1°C果がかなり大であつた。
(2) フラベド部の有機酸含量をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分画定量したところ, 主要有機酸はリンゴ酸とクエン酸であつた。貯蔵中, 1°C果と6°C果では構成比率に大差を生じ, 1°C果のフラベドではリンゴ酸のクエン酸に対する比率が顕著に増大した。
(3) フラベド切片にクエン酸-14Cを加えて30°Cで incubate すると, コハク酸, フマール酸, リンゴ酸などによく移行した。コハク酸-14Cを添加した場合はフマール酸とリンゴ酸にまで移行してもクエン酸への変化はわずかであつた。
(4) グルコース-U-14C, クエン酸-1,5-14C, コハク酸-1,4-14Cをフラベド切片に添加して14CO2の生成を測定したところ, コハク酸からの生産量が最も大きく, またその程度は1°C貯蔵果が6°C貯蔵果よりも大であつた。
(5) 1°C貯蔵の果実は, 障害発生以前においても, 6°C貯蔵のものに比べて多量のエチレンを生産していた。
(6) 普通の条件では障害の発生しない温度である6°Cにおいて, 500ppmのエチレン処理を行なつたところ, 30日ころより低温障害に非常に類似した生理障害が進展した。
(7) 1°C貯蔵果における代謝の異常とエチレン生産増大との関連性, ならびに低温障害発生に対するエチレンの役割について考察を行なつた。
有機酸の測定方法その他について京都大学食研葛西研究室下川敬之氏より御教示をいただいた。厚く感謝の意を表する。また本研究の一部は文部省総合科学研究費補助金に負うところがあつた。記して謝意を表する。

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