1969 年 38 巻 2 号 p. 169-177
本実験は, マツバボタンのさし木において, 不定根の原始体の分化および原始細胞群の形成の過程が二, 三のアミノ酸 (10-4%メチオニン, グルタミン酸, アスパラギン酸) あるいは0.1%ブドウ糖を培養液に添加した場合や温度により如何に影響されるかを研究した。
1. さし穂の茎の太さと維管束数との間, 維管束数と原始体の個数との間には相関関係は認められなかつた。
2. 原始体の分化期はメチオニンやグルタミン酸を添加した場合は遅れる傾向を示した。温度実験においては, 25°Cの場合に遅れる傾向を示した。
3. 原始体の個数はメチオニン, グルタミン酸やアスパラギン酸を添加した場合は抑制される傾向を示した。温度実験においては, 35°C, 25°Cおよび室温のいずれの温度においても, ブドウ糖の添加によつて促進される傾向を示した。
4. 原始体の分化する垂直的位置は, 本実験の処理温度に関係なく, 大部分の原始体は蒸留水のみの場合は切り口に近い位置に分化し, メチオニン, グルタミン酸, アスパラギン酸やブドウ糖を添加した場合は切り口から高い位置に分化する傾向を示した。
5. 原始細胞群の伸長はメチオニン, グルタミン酸やアスパラギン酸を添加した場合は抑制され, ブドウ糖を添加した場合は促進される傾向を示した。温度実験においては, 25°Cの場合は抑制され, 35°Cの場合は促進される傾向を示した。