抄録
1967~1969年にわたり, 二十世紀ナシにつぎ, 時期別に果実の日肥大周期の実態を調査し, 果実横径の日肥大周期と気象要因との関係を検討した.
1. 結実から成熟までの日肥大周期型は, ほぼ4期に区分できた. 第I期は結実後から梅雨期にかかるまでの間で, 縦径生長が横径生長よりもすぐれ, 昼間より肥大が始まり, 1日の肥大量は大であつた. 第II期は枝葉の発育最盛期でしかも梅雨期に当たり, 昼間の収縮が大でその継続時間が長く, 夜間の肥大量は劣つた. 第III期は最大肥大期で, 7月下旬に始まり, 日肥大量が著しくすぐれた. 第IV期は成熟前2週間ぐらいの期間で, 昼間の収縮はわずかとなり, やがてなくなつた.
2. 日肥大量, 日振幅量は, 幼果期には気温との間の相関が高く, 発育後期には日照時間との間の相関が高かつた.
3. 収縮量は, 梅雨期を除き, 日照時間および最高気温との間に著しく高い有意の相関を示した. 収縮速度は空中湿度の下降率との間に高い相関をもち, その傾向は高温であるほど著しかつた. また, 成熟期には収縮せず. いつの時期にも雨天日には収縮しなかつた. しかし, 晴天日でも散水処理により, 収縮に代わつて昼間より肥大がみられた.
4. 多くの場合, 夜半に肥大の低下あるいは一時的停止があり, その前後を分けて相関をみたところ, 夜間前半の肥大は湿度との相関がほとんどなく, 日肥大量との間に著しく高い有意の正の相関が得られた. しかし, 夜間後半の肥大は, 空中湿度が90%以上の高湿条件または湿度の急激な上昇に伴つて生じ, とくに空中湿度と夜温がともに高い時に著しく認められた. また, 夜間後半の肥大は翌日の収縮量と密接な関係があるものとみられた. これらの結果から, 前者は主として固形物の果実内集積に起因し, 後者は水分を主とする膨潤現象であると推測される.
5. 日振大量および日収縮量には, 当日の気象条件とともに, 測定日以前の環境条件も, ある程度まで作用した.