園芸学会雑誌
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キュウリの光合成産物の動態に及ぼす温度の影響 (第2報)
キュウリの14C-光合成産物の動態に及ぼす夜温の影響
村上 高稲山 光男
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1974 年 43 巻 1 号 p. 43-54

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抄録
キュウリの施設栽培における温度管理上の基礎的知見を得るため, 第1報(6)に引き続き14C-トレーサー法による実験を行なつた. すなわち, キュウリ (供試品種•夏埼落3号) に14CO2をとりこませ, 14C-光合成産物の動態におよぼす同化後の夜温の影響につき検討したものである.
1. 用いた植物材料はすべて均一条件下 (昼25°C, 夜14°C, 設定温度4時間のこう配型温度管理方式) で育苗し14CO2をいつせいに同化させた. 同化後, 昼温は25°Cにし, 夜温を高夜温 (20°C) と低夜温 (14°C) の2区(昼夜各12時間の水平型温度管理方式) に分けて2~3日経過させた. その植物体の乾物率は, 同化直後から同化後3日までの間に, 高夜温区では減少したが, 低夜温区では同化直後の乾物率を保持した (第3図).
2. 植物体各部位の比放射能をみると, 同化直後は下から10葉位の葉身で最も高く, 下から4葉位までの葉身では非常に低い. 同化後, 高夜温で経過すると, 下から8葉位以上の幼葉部での減少が著しく, 未展開葉部や茎および根でやや増加する. 低夜温で経過すると, 幼葉部での減少は著しくなく, かつ未展開葉部や根ではやや増加する. 特に下から2葉位までの老葉部では3日後に増加が認められた (第4, 5図).
3. 熱アルコールで抽出し, イオン交換樹脂で分画して14Cの体内における形態と分布に対する同化後の夜温の影響について検討した. その結果, デンプンやタンパク質などの貯蔵物質や体構成成分を含む画分の14Cは, 同化後低夜温で経過すると徐々に増加するが, 高夜温で経過すると増加しなかつた (第9, 10, 11図).
4. これらの結果から, 同化後に実施した2段階の夜温管理によつて, 次の結論が得られた. すなわち, 夜温20°Cでは光合成産物の移行は早いが, 夜間の呼吸こう進による系外放出量が多く, 一方, 夜温14°Cでは移行は遅いが消耗は少ないため, 最終的な蓄積は多いということが明らかにされた. 従つて, キュウリの栽培管理のうちで特に育苗期に限つては, 夜温を低く保つことの有利性に対する同化物蓄積の面からみた裏付けが得られたといえる.
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