園芸学会雑誌
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ナス果実の低温障害に関する研究 (第2報)
低温障害発生に対する熟度ならびに収穫時季の影響
阿部 一博茶珍 和雄緒方 邦安
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1976 年 45 巻 3 号 p. 307-312

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抄録
本実験はナス果実の低温貯蔵中の, ピッティングの発生, 種子や果肉のかっ変に及ぼす収穫時季ならびに果実の熟度の影響を調べるとともに, 果肉のかっ変に関し, フェノール物質およびポリフェノールオキシダーゼ活性の変化について調べたものである.
1. ピッティングは, 開花後5, 7日の未熟果と, 24, 27日の過熟果では発生が少なく, 一般に利用されている大きさの果実で最も多く発生した. 一方, 果肉ならびに種子のかっ変は未熟果ほど早く発生し, 1°C貯蔵4, 5日ごろからみられ始めたが, 過熟果ではあまり認められなかった. ピッティングの発生は収穫時季が冷涼期に近づくにつれて減少したが, 果肉ならびに種子のかっ変は減少しなかった. 対照区の20°C貯蔵では, いずれの収穫時季においても, ピッティング, 果肉ならびに種子のかっ変はまったく認められなかった.
2. 総フェノール含量は, 未熟果で多く, 開花後3日の果実で344mg/100g f. wtであったが, 果実が大きくなるにしたがい減少し, 開花後13日の果実ではほぼ55mg/100g f. wtであった. オルトジフェノールはいずれの果実でも30~40%の割合で含まれていた.
フェノール物質の主なものはクロロゲン酸であり, これがかっ変の基質であると推定した.
3. 貯蔵中のナス果実の総フェノールならびにオルトジフェノール含量は, 未熟果では, かっ変にさきだち増加がみられ, かっ変が現われた後は減少した. しかし, かっ変の起こらない過熟果では増加はみられなかった.
貯蔵中のナス果実のポリフェノールオキシダーゼ活性も未熟果でかっ変にさきだち急激に増加し, かっ変の起こった後は減少することを認めた.
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