抄録
本研究はヒヤシンスの増殖におけるリン片の組織培養の利用に関し, 培地条件, 置床の方法および不定芽形成の部位による差異とその意味するところを検討する目的で行われた.
1. 供試のヒヤシンス球根のリン片は MURASHIGE and SKOOG 処方による基本培地, 2,4-D 0.001~0.005mg/lを含む培地ならびにIAA•BA各0.5mg/l添加の培地のいずれでも容易に不定芽 (あるいは bulbil) を形成した.
2. 不定芽の形成はヒヤシンスではリン片外側の表皮から生じ, ユリの場合とは全く逆であった.
3. 不定芽形成過程の切片を組織学的に調べた結果, 単層の表皮中に始源細胞あるいは始源細胞群が存在するものと見られたが, 表皮のみの培養では不定芽は全く形成されなかった.
4. 不定芽の形成には内生オーキシン, サイトカイニン類の部位的な差異が関連するものとみられた.
5. 不定芽の形成には組織レベルの極性が存在するものと考えられるが, それは未知の誘起物質により打破される可能性も考えられた.