園芸学会雑誌
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温州ミカン果実の発育と品質に関する研究
特に開花時期と酸含有率との関係について
岩垣 功広瀬 和栄
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1980 年 48 巻 4 号 p. 418-425

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抄録
温州ミカン果実の品質, 特に果汁の酸含有率に影響する要因を明らかにする目的で, 開花時期と酸含有率の関係に重点をおいて試験を行った. 開花時期 (昭和53年5月18日~5月30日) に5日間ずつの差をつけた早期開花, 中期開花, 晩期開花の果実の発育と果汁成分を経時的に調査した.
1. 生理落果は, 開花時期が早いグループほど早くはじまったが, 落果のピークは開花時期による差が少なく, 落果の終了は中期開花において早かった. 中期開花の累積落果率は約50%で, 他に比較して約15%低かった.
2. 遅く開花したグループほど果実の肥大率が高かった. 横径, 縦径ともに, 遅く開花したグループが早く開花したグループとの差を相対的に縮少するような経過をたどったが, その傾向は縦径においてより顕著であった. その結果として果形指数は, 開花60日後にかけて, 開花のおそいグループにおいて急激に低くなった.
3. 11月9日の採集果の果肉100g当たりの砂じよう数は, 開花時期が遅い果実ほど少なかった. 果肉重に著しい相違がなかったので晩期開花の砂じょうは大きいといえる.
4. 糖度は, 10月下旬頃までは開花時期による差はなかったが, それ以後は, 開花が早かったグループほどやや高く経過した. 果皮の着色は10月下旬にはじまり, 開花時期が早い果実ほど良い傾向であった.
5. 果汁の遊離酸含有率は, 早期開花で最も早く低下しはじめ, 9月下旬以降は, 開花時期が5日遅れると酸の減少も5日遅れたままで収穫期近くまで経過した. クエン酸も, 遊離酸の場合とほぼ同様に推移した. 果実の酸含有量は開花の早晩と相関が高いように思われる.
6. リンゴ酸含有率は9月下旬までしだいに低下し, その後の変化は少なくなった. リンゴ酸のクエン酸に対する比率は, いずれの開花時期グループにおいても9月下旬に最低になった.
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