園芸学会雑誌
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加工用トマト果実の静圧荷重抵抗性と堆積厚さの許容限界について
伊藤 憲弘寺田 俊郎
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1982 年 50 巻 4 号 p. 521-531

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抄録
加工用トマトにおける収穫後の果実取扱い法について検討するため, 果実の静圧荷重抵抗性と堆積厚さの許容限界について試験を行った.
1. 一定の静圧荷重下における加工用トマトの挙動は粘弾性体のうち, 4要素模型のクリープ現象に酷似した.
2. クリープ試験結果から, ‘AT70/24’ ‘TE-30’ ‘ES-58’ の果実は硬く, しかも弾性的挙動を示す品種と考えられた.
果実のクリープ特性と色調 (a/b値) との間には, 0.1%水準で高い相関関係があり, 果実の硬さ及び弾性的挙動は成熟に伴い漸次低下することが確認された.
3. 荷重の大きさ, 負荷時間と果実変形量の関係から, 果実の裂開損傷の発生 ‘ES-58’ ‘TE-30’ ‘AT70/24’ で少なく, ‘H-1409’ ‘KG-127’ ‘くりこま’ に多い傾向が認められた.
裂開損傷に達する限界の変形率 ‘AT70/24’ が最も大きく, ‘H-1409’ が最も小さい値を示した.
4. 堆積厚さと果実の損傷程度との関係は堆積厚さが厚くなるほど, 損傷が大きかった.
供試品種における果実損傷の発生程度 ‘H-1409’ が最も大きく, ‘TE-30’ が小さい結果を示した.
堆積許容限界厚さ ‘AT70/24’ ‘ES-58’ ‘TE-30’ が大きい値を示し, ‘H-1409’ ‘KG-127’ が小さかった.
以上の結果から, 果実が硬く, さらに弾性的挙動に富む品種ほど, 静圧荷重に対する抵抗性は高いものと考えられた. 一なお, 供試品種中では ‘AT70/24/’ ‘TE-30’‘ES-58’ などが, 抵抗性品種育成のための育種素材を具備しているように思われた.
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