園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
ウンシュウミカンの窒素の吸収•代謝および分配に対する秋季低温の影響
加藤 忠司久保田 収治
著者情報
ジャーナル フリー

1982 年 51 巻 1 号 p. 1-8

詳細
抄録
15N-硫安を与えた3年生ウンシュウミカンを1976年9月中旬より10月中旬の1か月間, ガラス戸の付いた冷蔵庫内で生育させ,窒素の吸収, 代謝および分配に対する低温の影響を調べた. 冷蔵庫内の温度ははじめの12日間に9月中旬の温度 (日平均20°C) から11月下旬のそれ (同10°C) に徐々に低下させ, その後18日間は10°Cに保った. なお, 冷蔵庫と同容積で前面に10cm離してガラス戸を付けた木箱内で生育させた樹を対照とした.
この低温処理によって, 15Nの吸収量は対照の約1/3に減少し, 地上部への分配も60%から43%に低下した. さらに地上部へ移動した15Nの葉への分配が低下し, 低温は枝から葉への移動を抑制した.
窒素代謝に対する影響をみると, 葉では流入した重窒素量が低温によって約1/4に減少したにもかかわらず, 標識プロリンの量は減少せず, 他のアミノ酸の著しい減少と対照的であった. このことはプロリンの生成集積が低温の影響をあまり受けないことを意味する. 葉以外の部位においては顕著な影響は認められなかった. 根から葉に至る各部位の標識アミノ酸の集積量をみると, アスパラギン, アルギニンおよびガンマーアミノ酪酸は細根で多く, 葉に近い部位ほど低下した. 一方, プロリンは逆の集積パターンを示した.
著者関連情報
© 園芸学会
次の記事
feedback
Top