抄録
シンビジウムの茎頂培養において, 各種の生長調節物質が外植体の器官形成にどのように作用するか, また外植体の大きさが異なると生長調節物質による器官形成がどのように変化するかを明らかにするために, Cymbidium×Sazanami‘Haru-no-umi’を材料とし, Murashigeand Skoog(20) の固体培地を用いて実験を行った.
活着率は, NAA と ABA の高濃度で抑制されたことを除けば, 良好であり, 葉原基3枚の小さい外植体でもすべて活着した. オーキシンは不定根形成を促進し, シュート形成を抑制した. この活性は2, 4-Dで最も強く,ついで NAA, IAA であった. 2, 4-D の高濃度は奇形化した不定根を形成した. 2, 4-D の 0.1ppmの NAAの1.0ppmは葉原基6枚をもった外植体に不定根のみを形成させ, 外植体を一個の植物体へと発育させた. サイトカイニン(BA)は, オーキシンとは反対に, シュート形成の促進作用を示すとともに高濃度では不定根形成を抑制した. ジベレリン(GA3)は, 低濃度でプロトコーム状球体 (PLB) と不定根を形成したが, 高濃度では不定根形成を抑制した. ABA もGAと同様な結果を示したが, 高濃度では外植体を褐変させ, 器官形成を完全に抑制した. 茎頂外植体の大きさを葉原基(LP)数で2, 4, 6枚としたとき, 対照区の2LPでは1~2個の PLB のみを, 4LPは PLB, シュート及び不定根を良好に形成した. しかし6LPでは4LPよりもシュート形成が抑制された.
この結果から, オーキシンやサイトカイニンの内生レベルが2LPでは共に低く, 4LPでは共に最も高いが特にサイトカイニンレベルが高く, 6LPではオーキシンレベルが高いものと推察された. したがって, 各生長調節物質特有の作用性を示す至適濃度は, 茎頂外植体の葉原基数に応じて変化すると思われる.