抄録
1.‘二十世紀’ナシの開花期に処理した bendroquinone が花の発育およびそれにともなう内生生長調節物質の消長に及ぼす影響を調査し, 摘花効果との関連を検討した.
2. 受粉花に bendroquinone を処理すると, 落花する花は処理後10日ごろから花こうが黄変し始め, 花たくの発育が著しく低下した. Bendroquinone 処理花の花こう基部の細胞層数および維管束径は, 無処理花に比べ有意に減少した.
3. Bendroquinone 処理が‘二十世紀’ナシの胚の発達および花こう基部の発育に及ぼす影響を組織学的に観察した結果, 処理花には分離層の形成および胚の発達が認められ, 無受精による落花とは区別できた.
4. Bendroquinone 処理によって, 花たくおよび花こうのジベレリン様活性およびサイトカイニン活性は, 処理後著しく低下したが, IAAおよびABA含量は,無処理に比べ差が認められなかった.
5. Bendroquinone 処理花の花こうにIBA, NAAおよびGA3を塗布すると, 摘花効果が抑えられたが, カイネチン, ABA, IAAおよびエセホンを塗布しても, 摘花効果に影響はなかった.