抄録
水耕培養液中のNO3とNH4の濃度並びに比率がそ菜の生育, 葉中N成分及び培養液のpHに及ぼす影響を検討した. 実験1では, キュウリ, レタスなど10種を供試して, 培養液中のNO3/NH4比がme/lで3.0/0~0/3.0 (低Nシリーズ) と12/0~0/12 (高Nシリーズ) の各7区を設けた. また実験2では, レタス, キャベッなど4種を供試して, NO3 (1~24me/l)シリーズ, NH4 (1~12me/l) シリーズ, NO34me/l+NH4 (1~12me/l) シリーズ, NO312me/l+NH4 (2~12me/l) シリーズの計20区を設けた. 実験1, 2ともに培養液のpHは毎日1回測定して, その都度6.0に調節し, 原則として3週間栽培した.
NO3施用の場合に比べて, NH4施用では一般に葉中NH4-N濃度が高く, 生育は阻害された. しかし少量のNO3の併用により葉中NH4-N濃度は低下し, NH4害は軽減あるいは防止された. またNO34あるいは12me/lにNH4を併用した場合には, NO3のみを施用した場合よりも生育は明らかに促進された.
葉中NO3-N濃度は, 培養液中のNO3濃度が高まるにつれて高くなった. また低Nシリーズでは, いずれの葉菜も培養液中のNH4の比率が高まるにつれて葉中NO3-N濃度は低下したが, 高Nシリーズではハクサイ,ホウレンソウなどNO3を優先的に吸収するそ菜では,培養液中のNH4の比率が高まっても葉中NO3-N濃度の低下はほとんど認められなかった.
培養液のpHはNO3のみを施用すると上昇し, NH4のみでは著しく低下した. 両N併用の場合, キュウリ, レタスなどNH4を優先的に吸収するそ菜では, 培養液中のNO3とNH4の比率にかかわりなくpHは低下した. 一方, トマト, ホウレンソウなどNO3を優先的に吸収するそ菜では, 両Nの比率が適当な値の場合には, 実験期間中培養液のpHはあまり変化しなかった.