抄録
本研究はクライマクテリック型のトマト果実と非クライマクテリック型のキュウリ果実を用い, エチレン生成の相違をエチレン生合成経路の面から知るため, ACCからエチレンの過程をその果実の生育期間を通して調査したものである.
開花後28日 (未熟) と34日 (mature green) のトマト果実にエチレン処理 (10ppm, 24hr) をした. その結果, 炭酸ガスの生成は促進され, 処理終了により一時減少した. 貯蔵期間中, 28日の果実はエチレンと炭酸ガス生成の増加があった. 34日の果実はエチレン生成の増加はあっても顕著な炭酸ガス生成の増加はなかった. キュウリ果実 (開花5日, 8日, 20日) はエチレン処理 (10ppm, 56hr) によりどれも炭酸ガスの生成が促進されたが, 処理終了後は減少し, 以後健全な果実ではエチレンと炭酸ガス生成の増加は認められなかった.
各種の生育段階の両果実の切片にD型, L型のメチオニン及びACCを添加して, エチレン生成への影響をみた. ACCの添加によるエチレン生成の促進をEFE(Ethylene forming enzyme, エチレン生成酵素) 活性とした. トマト果実切片ではどの処理区においても maturegreen stage でエチレンの生成は最も少なく, 未熟時と追熟過程で多かった. ACCを添加したものはエチレン生成が促進された. キュウリ果実切片でもACCを添加すると, エチレンの生成は促進された. しかし,生育段階による大きな差異は認められなかった. メチオニンについては, キュウリ切片においてD型のみ促進効果がみられた.
両果実のACC含量を生育段階を追って調査した. トマトでは mature green Stage で最少であり, 未熟時にやや多く, 追熟時に増加した. キュウリ果実では生育段階の進展とともに減少した.
ACCからエチレンの過程にエチレンが影響するかどうかを調べるため, キュウリ果実切片にエチレン類似物質であるプロピレン処理をした. その後ACCを添加したところ, プロピレン処理をしたものはしないものに比較して, より多くのエチレン生成があった.
以上のことから, トマトとキュウリ果実のエチレン生成の相違は, EFE活性の強弱よりむしろACCの含量が制限因子となっているものと思われた.