園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
サトイモの種芋及び幼植物に対するジベレリン酸処理による開花促進
宮崎 貞巳田代 洋丞金澤 幸三柳川 政雄田原 稔
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 54 巻 4 号 p. 450-459

詳細
抄録

わが国で栽培されているサトイモの3倍性の6品種;‘〓芋’, ‘蓮葉芋’, ‘石川早生’, ‘親責’, ‘太湖蕃’, ‘大吉’,2倍性の2品種; ‘唐芋’, ‘筍芋’及びコルヒチンで作出された‘筍芋’の4倍体についてジベレリン酸(GA3) 処理が開花, 花序の形態並びに花粉の稔性に及ぼす影響を調査した.
GA3処理は, 8品種の種芋については植え付け1日前に0,250, 500, 1,000ppmの水溶液に, 種芋の頂芽を2時間浸漬し, ‘筍芋’とその人為4倍体の幼植物については500ppm の水溶液を葉柄基部に3葉期から2,5,7日間隔で1~2mlずつ4回滴下して行った.
開花は, 処理した8品種と人為4倍体のなかで, ‘蓮葉芋’と‘唐芋’を除いた6品種と人為4倍体, 及び無処理の‘〓芋’に認められた. GA3 の3種類の濃度に対する反応は品種によって異なっていた.
開花株率は, 滴下処理した‘筍芋’とその人為4倍体ではともに100%で, 浸漬処理した6品種では6.7~84.6%であった. 開花数は開花株率が低い‘石川早生’, ‘親責’及び‘太湖蕃’では平均約1花であったが, 開花株率の高い‘〓芋’や‘大吉’では2.5花以上で, 滴下処理した‘筍芋’とその人為4倍体ではそれぞれ14.5花と7.3花であった.
開花は最も早い浸漬処理の‘筍芋’で処理10週間後に認められ, 最も遅い‘石川早生’と‘親責’では13週間後であった. また, 処理した‘〓芋’は無処理のものより3週間以上も早く開花した. 開花期間は3品種が1~4週間で, 2品種及び‘筍芋’とその人為4倍体が約9週間であった.
ほぼ同一時期に開花した‘〓芋’の処理株の花序と無処理株の花序は, 花序の各部分の長さ, 小花数ともにほとんど同じであった. しかしながら, 処理区のなかで,早期に開花した花序は後期の花序と比較して小花数が少なかった. また, ‘蓮葉芋’と‘唐芋’を除いた処理したすべての品種に肉穂花序を欠く多くの苞状奇形が生じた.
3倍性品種の‘石川早生’, ‘親責’及び‘太湖蕃’は全く花粉を放出せず, 3倍性品種の‘〓芋’と‘大吉’及び2倍性の‘筍芋’とその人為4倍体の花粉の放出は不安定であった. 3倍性品種の花粉の発芽は極めて少なく, 早期に開花した花序の花粉は全く発芽しなかった. 一方,2倍性の‘筍芋’の花粉は3倍性品種のそれよりもよく発芽し, その発芽率は24.7%であった.

著者関連情報
© 園芸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top