園芸学会雑誌
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水耕培養液中の鉄濃度がそ菜の銅過剰障害に及ぼす影響
大沢 孝也池田 英男
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1989 年 58 巻 3 号 p. 673-678

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抄録

培養液中の Fe 濃度がそ菜の Cu 過剰障害に及ぼす影響について検討するため, インゲンマメ, ホウレンソウ, レタス, ハツカダイコンを供試して水耕試験を行った. 基本培養液には Hoagland 第1液を用い, 処理は Cu0.02, 0.3, 1, 3ppmと, Fe (Fe-EDTA による) 1, 3, 10, 30ppm の組み合わせ (計16処理区) とした. 培養液のpH は5.0に調節した.
1. Fe 1ppm 施用の場合には, Cu 処理濃度の上昇につれて各そ菜とも生育が著しく阻害され, Cu 1 及び3ppm区ではレタスを除くそ菜の上位葉に葉脈間クロロシスが発生した. Cuが標準濃度の0.02ppmの場合には, 一般に正常な生育にとってFeは1ppmで充分であり, また10ppmをこえるような高濃度は不必要或しくは有害であった. しかしCu 0.3及び1ppmではFeを3ないし10ppmまで高めると, 生育阻害を軽減し, クロロシスの発生を防止する効果がみられ, とくにインゲンマメ, ホウレンソウにおいて顕著であった. Cu 3ppmでは各そ菜とも下葉の枯れ上がりや根のかっ変が著しく, Fe 増施によってクロロシスの発生は防止できたものの, 生育阻害を軽減する効果はあまり認められなかった.
2. 以上のように適度なFe増施がCu害を軽減する効果は, 植物体とくに根中におけるCu蓄積の抑制によるものと考えられた. クロロシス発生区では, 葉中の1N HCl可溶性 Fe 含有率が明らかに低く, 葉中における Fe の不溶化が示唆された.

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