園芸学会雑誌
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電気融合法によるカンキツとその近縁野生種との体細胞雑種の作出:メキシカンライム(Citrusaurantifolia)と,ジャワフェロニエラ(Feroniella lucida)およびタボッグ(Swinglea glutinosa)との細胞融合
高柳 りか日高 哲志大村 三男
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1992 年 60 巻 4 号 p. 799-804

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抄録

カンキツ交雑実生群に現われるやくの退化については,比較的簡単な遺伝をすること,細胞質が関与している可能性があることなどが示唆されているが,その詳細については明らかでない.そこで,本報告ではやくの退化した5品種を種子親に用いた18組合せ418個体のやくの状態を調査し,やくの退化の遺伝様式について検討を加えた.併せて,着果したものについては含核数についても調査した.
すべての組合せでやくの退化した実生が現われたが,出現率は組合せにより異なっていた.'ミネオラ'および'ロビンソンを花粉親とした組合せでは花粉が形成された実生が多かったが,それ以外の組合せでは約半数の実生のやくが退化していた.種子数についても組合せの違いにより実生個体での無核果の出現率は異なり,この場合には花粉親の影響も認められた.
ほとんどの花粉親を用いた組合せでは,やくの退化と花粉形成の比が1:1の分離比に適合した.しかし,'ミネオラ'および'ロビンソンを花粉親とした組合せでは1:1より1:3の方が実際の分離に近かった.このことから,カンキツにおけるやくの退化に関する核内遺伝子について,本報告で用いた花粉親は,ヘテロであること,やくの退化は劣性ホモで発現すること,その遺伝には2遺伝子が関与している可能性が強いことが明らかとなった.
謝辞本稿を取りまとめるに当たり,ご校閲を頂いた京都府立大学教授石田雅士博士に深謝の意を表します.

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