園芸学会雑誌
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固体支持材を充填したセル成型トレー培地によるミヤコワスレの組織培養
元岡 茂治小西 耕小西 昌子澤 慶子佐竹 美保小西 国義
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1992 年 60 巻 4 号 p. 971-979

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抄録

1.組織培養苗の生産コストを削減するために,苗生産の省力化が可能な固体支持材培地を用いた培養法を開発し,植物の生育に及ぼすその培地の特性を明らかにした。また最終培養の期間が植え出し後の植物の生長に及ぼす影響について調べた。
2.固体支持材の材料として,パーライト,バーミキュライト,ピートモス,ロックウールを用意した.ロックウールはそのままで,その他の資材は単独または混合してセル成型トレーに充唄して用いた.植物支持材としては,粒径を2mm以下に調整したパーライトとバーミキュライトの等量(容積比)混合物を,セル成型トレーに充順した培地(以下PV培地)が適していた。PV培地における植物の容器内生長は,寒天培地のものより勝った。PV培地は,植物支持材に含まれている培養液を植え出し時に水洗することによって,そのまま植え出し後の育苗培地として使用することができた.そのためPV培地では,植え出し時に苗を移植する必要がなく,植え出しの作業能率が高かった。
3.PV培地においては,培養液の量は寒天培地より少なくてよく,培養液の濃度は寒天培地よりも高い方が適していた。
4.植物の最終的な生長量は,最終培養の期間を3週間として早く植え出した方が大きく,培養期間が長過ぎるとかえって劣った。3週間培養したのちに植え出した植物の生長は,植え出し直後の3~6週間はPV培地区の方が対照区よりも勝るか同じであった。しかしその後の3週間で土量の多い対照区の方がよくなった。PV培地の植物を植え出し後も良好に生育させるためには,植え出し後3~6週間のうちに移植または定植するか,あるいは育苗上の環境改善が必要であると思われた。

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