抄録
岩手県紫波町内から盛果期に達したM. 26台'ふじ'が植栽された41のリンゴ園を選び出し, 園地の立地条件と果実品質との関係を統計的に解析した.
1.全糖含量, 滴定酸度および果肉硬度の問には高い正の相関が認められた. これら3形質に対して主成分分析を行ったところ, 第1主成分は三者のおおよその大きさを示し, 第2主成分は全糖含量の滴定酸度と果肉硬度に対する相対的な重み, つまり熟度を示すと考えられた.
2.第1主成分は園地の受光条件との関連が強いと考えられた. 特に「西日の受光条件」の影響が強く,受光条件が良いほど得点は高かった. また, 「土壌型」では沖積土壌で得点が低い傾向が見られた.
一方, 第2主成分に対しては「土性」の影響が強くみられ, 表層, 下層とも強粘質の土壌で熟度が進んでいた. 「土壌型」による熟度の違いをみると火山灰土壌で進み, 沖積土壌で遅れていた.
3.各糖含量の間には相関関係が認められたため主成分分析を行ったところ, 第1主成分は全糖含量を,第2主成分は非還元糖に対する還元糖の相対的な多さをあらわす指標と考えられた.
第1主成分得点は「西日の受光条件」が良いほど高い傾向にあり, 表層, 下層とも強粘質な土壌では高く,沖積土壌で低かったが, 第2主成分得点は南向きの園地, 傾斜のきつい園地および沖積土壌で高かった.
4.果汁の褐変程度に対しては「土壌型」の影響が強くみられ, 褐変の程度は赤黄色土 (堆積岩由来) >赤黄色土 (火成岩由来) >火山灰土壌>沖積土壌の順であった.