園芸学会雑誌
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トルコギキョウの高温遭遇後の抽だい特性に基づくロゼット性の品種分類
福田 康浩大川 清兼松 功一是永 勝
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1994 年 62 巻 4 号 p. 845-856

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抄録

トルコギキョウは幼苗期の高温遭遇によりロゼット化し, ロゼット化すると低温に遭遇しなければ抽だいしないという特性を有する. 多数の品種を供試して計4回の実験を行い, いずれの実験もロゼット化を誘導するような高温条件に遭遇させて, 品種ごとに毎週の抽だい率 (累積) を調査した. その結果, 同一の環境条件下 (実験) においても品種によって抽だい率の推移パターンは大きく異なり, 明確な品種問差異が認められた.
高温条件に遭遇させた後に, ロゼット打破に有効な温度条件で栽培した場合, ロゼット化しにくい品種や打破されやすい品種は抽だいが早く, ロゼット化しやすく打破されにくいものは抽だいが遅くなると考えることができる. よって, 抽だいの早さから品種のロゼット性 (ロゼット化のしやすさや打破されやすさ) が判断できると仮定した. しかし, 品種間の抽だい率の大小関係は調査時期によって異なる場合があり, 単一の抽だい率で品種のロゼット性を判断することには問題があった. トルコギキョウはある程度の雑種性を残して品種が維持されているため, 品種内にロゼット性に関する変異が存在し, 品種によってその変異の程度が異なると考えられた. したがって, 各品種の抽だい速度の分布 (抽だい率の推移パターン) が品種を構成する個体のロゼット性の分布に等しいと仮定して, 抽だい速度の分布に基づく品種分類を行った.
抽だい率の推移パターンは, 実験ごとに20%,50%, 80%抽だい時の播種後週数 (それぞれa値, b値, c値とする) を求めて, 3つの数値で表示した.さらにb値を平均的なロゼット性の程度, c-a値を変異の程度と考えて, それぞれアルファベット (A~Eの5段階;Aは最もロゼット化しにくく打破されやすい品種, Eは最もロゼット化しやすく打破されにくい品種) と数字 (1~5の5段階;1は最も変異の小さい品種, 5は最も変異の大きい品種) でランクづけし,それらを組みあわせて分類した. さらに, 各実験の分類値をもとに計125品種について総合分類を行った.その結果, 各品種のロゼット性の程度や揃いの程度が明らかとなり, 高温期に育苗する作型の品種選定や,ロゼット化しにくい品種の育成に有効と考えられる情報が得られた.

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