園芸学会雑誌
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養液栽培におけるカルシウムの施用レベルがキクの生育と切り花品質に及ぼす影響
景山 詳弘島 浩二小西 国義
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1995 年 64 巻 1 号 p. 169-176

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抄録
秋ギク'秀芳の力'を用いて養液栽培を行い,培養液のカルシウム濃度とカルシウム吸収量ならびに生長量を調査した.また,切り花栽培における切り花1本当たりのカルシウムの最低施用量を検討した.
1.キクの栄養生長が最も旺盛な時期の22日間において,培養液のカルシウム濃度が20~80ppmの範囲では,濃度が高くなるほどカルシウムの吸収速度は早くなったが,生長速度には差がなかった.
2.培養液のカルシウム濃度が高くなるにしたがって,植物体内のマグネシウム含有率は低くなり,明らかなきっ抗作用が認められた.
3,培養液のカルシウム濃度を0とした場合には,処理開始から7日後に最上位の展開葉に輪郭の不明瞭な黒褐色の小斑点が出現し,12日後には生長速度が低下し,その後上位葉に激しいカルシウム欠乏症状が出て茎が伸長しなくなった.
4.11月開花の切り花栽培において,1株当たりの培養液量を5.3literとして,植え付け時にカルシウムを1株当たり50,100,200,400mg施した場合,50mg区と100mg区では栽培の途中でカルシウム欠乏症状が激しく現われて茎は途中で伸長を停止した.また,200mg区では開花したが,花序にカルシウム欠乏症状が出て,切り花の商品価値はなかった.一方,400mg区では,正常に開花し,品質の良い切り花が得られた.この栽培では1株2本仕立てとしたので,切り花1本当たりに必要なカルシウムの最低必要吸収量は180~200mgであると推定され,また,いずれの区でも施与したカルシウムはすべて吸収されたので,この値が最低施用量であると考えられた.
5.カルシウム濃度を40ppmに維持した区では,多量に吸収され(1株当たり978.1mg),開花は正常であったが,茎葉が過繁茂となり,切り花の品質は悪かった.また,カルシウムは多量に吸収されても過剰害はなく,ぜいたく吸収される要素であると考えられた.
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