抄録
大根島 (島根県) で育種•選抜されたボタン38品種の花色と色素組成を調査した. まず色相 (Hunter,a, b値) は, 白色系品種と二, 三の桃色系品種を除いて赤, 赤紫および紫の範囲にあり, 明度と彩度(Hunter, L, C値) の関係では, 赤色系品種はくすんだ色から濃い (暗い) 色の, 桃色系品種はごく淡い色からくすんだ色の, また紫色系品種は, 1品種を除いて濃い色から暗い色の範囲にあり, きわめて鮮やかな色の品種は見出せなかった.
色素組成は, 赤色系品種はペラルゴニジン系を主体とし, 桃色系品種はペラルゴニジン3,5-ジグルコシドかペオニジン3,5-ジグルコシドを主体とし, また紫色系品種はペオニジン3,5-ジグルコシドを主体とするが, 濃紫色の品種に多量のシアニジン系が混在する特徴を示した.
花色と色素組成との間には, 青みが増すにつれてペラルゴニジン系は減少し, 逆にペオニジン系が増加する傾向が認められ, アントシアンの水酸化とメチル化は, 配糖体化やコピグメント効果よりもボタン花色の青色化に寄与していると推察された.
将来の花色育種に関して, ペラルゴニジン3-グルコシド含有量の高い'芳紀', '新島の輝き', '紅輝獅子'が鮮紅色品種の育種親として, また, ペオニジン3,5-ジグルコシド含有量の高い'豊麗'が青色品種の育種親としてそれぞれ有望である.