園芸学会雑誌
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トマト穂木の蒸散に及ぼす相対湿度•光強度および葉温の影響
信岡 尚小田 雅行佐々木 英和
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1996 年 64 巻 4 号 p. 859-865

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抄録
トマトの接ぎ木における好適な養生条件を明らかにするため, 相対湿度 (70%, 85%および97%), 光強度 (光合成有効光量子束密度0, 77および465μmol•m-2•s-1) および葉温を変えて穂木の蒸散速度を測定した. 台木からの水分供給が十分な場合と不足する場合のモデルとして, 供試穂木の胚軸を子葉下約3cmで切断して, その下端を水に浸漬および非浸漬処理した.
1.浸潰処理した穂木では, 相対湿度が低いほど蒸散速度が大きくなった. 時間の経過にともなう蒸散速度の変化はわずかであった. いずれの相対湿度においても穂木の萎凋は認められなかった.
2.光強度が大きくなるにしたがって, 浸漬処理した穂木の蒸散速度は増加した. 気孔は光強度が大きくなるほど開いたが, 気孔開度への葉温の影響は小さかった. しかし, 光強度の増大にともなう葉温の上昇も蒸散速度の増加に寄与していることが明らかとなった.これは, 葉温の上昇が葉面境界層の水蒸気飽差を増大させたことによると考えられた.
3.非浸漬処理区においては, 測定初期での蒸散速度に及ぼす相対湿度と光強度の影響は浸漬処理区と同様であった. しかし, 処理開始2時間後には, 低湿度区や強光区では穂木が萎凋し, 蒸散速度が急激に減少して, 相対湿度や光強度の違いによる蒸散速度の差が認められなくなった. この蒸散速度の低下は気孔の閉鎖によるものだけでなく, 穂木の水ポテンシャルの低下にともなうクチクラ蒸散の減少にも原因があると考えられた.
4.したがって, 穂木の萎凋を防止するためには,高い相対湿度と低い光強度の下で養生することが必要である. また, 光源から熱線を除去することによって,より高い光強度の下で接ぎ木苗を養生できることが示唆された.
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