抄録
嫌気条件下で貯蔵したブロッコリーによる異臭の発生の解明を目的とした.急速に嫌気状態を形成させるために,ブロッコリーは厚さ100μmのポリエチレンフィルムで密封包装し,20°Cで4日間貯蔵した.包装袋内の雰囲気は貯蔵8時間以内に02濃度0.5%以下,CO2濃度20%以上に到達し,このような嫌気条件下で異臭の発生が認められた.嫌気包装袋内のヘッドスペースガスからはエタノール,アセトアルデヒド,メタンチオール,ジメチルジスルフィドが同定された.硫黄化合物のメタンチオールおよびジメチルジスルフィドは異臭の主要な構成物質であり,このような硫黄化合物の生成に関与しているC-Sリアーゼ活性は嫌気包装区と対照区とも貯蔵期間を通して変化しなかった.花蕾部からの電解質漏出程度を測定したところ,嫌気包装区では対照区と比較して電解質漏出程度は増大した.また,嫌気包装ブロッコリーから調製したミクロソームの脂質中の遊離脂肪酸のレベルは対照区よりも明らかに高かった.
これらの結果から,嫌気条件下で貯蔵したプロッコリーの異臭の原因となる硫黄化合物のメタンチオールおよびジメチルジスルフィドは嫌気条件下における生体膜の機能低下に伴う局在性の破壊によって酵素と基質が接触することによって生成されたのではないかと推察された.