園芸学会雑誌
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ブドウ'キャンベル・アーリー'の胚の休眠覚醒に及ぼす胚乳の役割
劉 俊松堀内 昭作尾形 凡生塩崎 修志望岡 亮介
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1998 年 67 巻 5 号 p. 728-733

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抄録

ブドウ'キャンベル・アーリー'の胚の休眠覚醒に及ぼす胚乳の役割について調査した.種子から摘出した胚を胚乳とともに, あるいは胚単独でin vitroで培養して発芽率を調べたところ, 胚単独ではベレーゾン期の1週間前に発芽率が最も高く, その後, ベレーゾン期の2週間後にかけて発芽率は急激に低下して深い休眠状態に至った.一方, 胚乳を付けた胚では, 発芽率は徐々に増加して, ベレーゾン期の2週間後に最大となった.成熟種子から摘出した胚乳付きの胚をin vitroで0, 6, 12および24時間培養し, その後, 胚乳から切り離してさらに培養したところ, 6時間培養では発芽, 発根とも全く認められなかったが, 12時間培養ではわずかに発芽と発根が認められ, 24時間培養では高い発芽率および発根率が認められた.子葉および胚軸を取り囲んでいる成熟胚乳の外縁組織を取り除いて培養したとき, 胚の発芽率および発根率は高かったが, 根端を取り囲んでいる胚乳を取り除いて培養すると, 胚の発芽および発根は完全に認められなかった.胚乳を付けたまま24時間培養して休眠覚醒した胚では, 根端が伸長を開始し, 胚乳との接合部の細胞が活発に活動していることが観察された.以上の結果, 成熟した胚乳は胚の休眠覚醒を制御しており, 根端と連結している胚乳組織が胚の休眠覚醒に重要な役割を果たしていることが明らかとなった.

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