抄録
施設栽培された夏作,冬作の温室メロンの蒸発散量を比較測定し,気象要因,植物要因が蒸発散量の生育時期別変化および日変化に及ぼす影響を検討した.生育時期別の蒸発散量は,定植から開花後1週間まではS字型曲線で示すことができ,その後は果実生長にともなって徐々に低下した.定植から収穫までの全蒸発散量は1株当たり夏作116kg,冬作60kgであり,日蒸発散量の最大値はそれぞれ3.0kg, 1.3kgであった.蒸発散量は生育初期には葉面積の増加につれ急増し,着果以降は葉の蒸散能力の低下につれて低下した.そのため,かん水量は葉面積の増加につれ増やし,果実の生長につれ減らす必要がある.日射量,飽差,蒸発散量の日変化をみると,夏季晴天日においては日射量は正午ころ最大となるが,飽差はそれより遅れて最大となった.そのため,午後の蒸発散量は午前の蒸発散量に比べて大きくなった.冬季においては,飽差について特徴的変化が認められた.すなわち,夕方から早朝にかけての飽差は暖房により高く,昼間の飽差は低換気率のため低くなった.これにより,蒸発散量と飽差との相関は低くなった.回帰分析の結果,蒸発散量に影響する主要な気象要因は日射量であることが認められた.