抄録
グラジオラス'トラベラー'を主に用いて,花蕾子房からのカルス形成,植物体再生条件を検討し,以下の結果を得た.1.カルス形成は花被下部および子房を外植体とした場合に認められ,形成率は花被下部が56.0%,子房が94.0%で子房の方が高かった.カルスからのシュート形成率は花被下部が64.0%,子房が63.0%で差が認められなかった.2.子房からのカルス形成に用いる小花ステージは,開花2~3日前の未開花期(花蕾)が雑菌汚染率が低く,カルス,シュート形成率が高く,適していた.3.花蕾子房からのカルス形成はMS培地にNAA,BAPともに5mg・liter-1を添加した場合,すべての外植体からカルスが形成された.4.カルスからのシュート形成はMS培地に2mg・liter-1 BAPを添加した場合に最も高く,形成率は66.0%であった.5.花蕾子房からのカルス形成には品種間差異が少なかったが,カルスからのシュート形成率には品種間差異があって,'トラベラー'が高く,'ヘクター'が低かった.6.'トラベラー'から形成されたシュートはMS培地に継代培養後,発根し,球茎を形成した.この球茎を休眠打破後,定植,栽培した結果,植物体は生育,開花し,原品種'トラベラー'と同一のピンク色の花色で,花型についても大きな変化は認められなかった.