園芸学会雑誌
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キク花首曲がりの組織構造と'秀芳の力'におけるその発生率の系統間差
谷川 孝弘小林 泰生松井 洋松田 由理子
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1999 年 68 巻 3 号 p. 655-660

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抄録

キク'秀芳の力'の電照抑制栽培で発生する花首曲がり発生の仕組みを明らかにするため, 花首曲がりを生じた茎の組織構造の観察を行った.また, '秀芳の力'の系統間による花首曲がりの発生程度の差について検討した.1. キク'秀芳の力'で発生する花首曲がりには, 発蕾後の頂芽の花首が一方向に曲がる場合(花首曲がり症)と, 頂芽の花首と最上位の腋芽の花首とが癒着し, 癒着した方向に花首が曲がる場合(癒着症)の2種類のタイプがあった.2. 花首曲がり症の茎では, 止め葉付近から上位の維管束組織にねじれや, 断片的に亀裂した構造が確認された.また癒着症では, 互いの皮層組織が癒着しており, この皮層組織の内部に, 通常の皮層細胞とは異なる小片細胞の集合体や維管束組織の断片が点在していた.このような維管束組織の形成異常が花首曲がりの直接的な要因と考えられた.3. 明期25℃, 暗期15℃で12時間日長とした室内における頂芽と最上位の腋芽の花芽の発達および腋芽の伸長経過を調べた.頂芽では, 短日開始約4日後から生長点が肥大を始め, その後総苞形成期, 小花形成期等を経て, 約3週間後には発蕾が認められた.それに対して最上位の腋芽では, 短日開始約9日後から生長点の肥大が始まり, 4∿5日のずれで発達し, 短日開始20日後の小花形成期頃から花首の急速な伸長を開始した.このことから, 花首曲がりは短日開始1週間後から3週間後の期間に決定されると推定された.4. 福岡県農業総合試験場で保存している'秀芳の力'26系統について, 電照抑制12月出し栽培を行い, 切り花時の花首曲がり角度を調査した.各系統の平均花首曲がり角度は, 最低10.4度(系統No.1)から最高23.9度(系統No.225)の範囲に含まれ, 明らかに系統間差が認められた.花首曲がり角度と収穫時の平均節間長(切り花長を葉数で割った値)との間には正の相関(r=0.43)が認められた.

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