抄録
低温耐性の大きいキュウリ品種'津春三号'と小さい品種'四葉'を供試して, 葉の酵素的および非酵素的抗酸化活性に及ぼす低温処理(3℃・暗黒・24時間)の影響を調べた.低温処理中は, 葉のスーパーオキシドディスムターゼ(SOD), パーオキシダーゼ(POX), アスコルビン酸パーオキシダーゼ(APX)の活性は, 両品種とも15℃・暗黒下での活性と大きな差異がなく, カタラーゼ(CAT)活性は両品種ともに顕著に低下した.しかし, 低温遭遇個体を常温(28/22℃・12時間日長)に戻すと(常温回復), '津春三号'ではSODとAPXの活性が顕著に増大した.SODとAPXの活性の増大は'四葉'でもみられたが, 増大程度はいずれも'津春三号'より小さかった.POX活性は両品種とも顕著に増大した.非酵素的抗酸化活性については, '津春三号'では, 常温回復前半にアスコルビン酸(AsA)の増加とデヒドロアスコルビン酸(DHA)の減少が起こったが, 後半にはAsAが減少してDHAが顕著に増加した.また, 還元型グルタチオン(GSH)と酸化型グルタチオン(GSSG)も常温回復前半に増加した.'四葉'では, 常温回復前半にDHAが顕著に増大したが, AsAはほとんど変化しなかった.また, GSHとGSSGは, 常温回復後18時間以降に低温遭遇葉で高くなった以外は対照区と差がなかった.これらの結果から, 低温遭遇個体が常温に戻されたときに, 葉のSOD, APX, AsA, GSHからなるラジカル消去系の活性を高める能力の大きいことが, '津春三号'の高い低温耐性に関係していると推察される.