園芸学会雑誌
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わい性および半わい性台木利用リンゴ樹の花芽形成に及ぼす栽植密度の影響
黒田 治之千葉 和彦
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2000 年 69 巻 3 号 p. 298-307

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抄録
わい性および半わい性台木を利用した主幹形リンゴ'スターキング・デリシャス'樹の花芽形成に及ぼす栽植密度の影響について検討した.1. 栽植密度の増加に伴って, 1樹当たり花芽数および花芽形成率は減少したが, 1ha当たり花芽数は増加する傾向がみられた.2. 1樹当たり花芽数(Z)と栽植密度(ρ)の関係は, 次のような逆数式によって記述できた.1/Z=(1.46ρ+82.7)10-6(1)また, 1ha当たり花芽数(δ)と栽植密度(ρ)の関係は, 次のような逆数式によって表すことができた.1/δ=1.46・10-6+82.7・10-6/ρ(3)3. 1樹当たり花芽数および花芽形成率と樹高/樹幅比との間にはそれぞれ負の相関関係が認められ, 栽植密度の増加に伴う花芽形成の低下が直立性の樹形と密接に関係していることが示唆された.4. 花芽着生の垂直的分布は樹冠内相対日射の減衰パターンと密接な関係がみられ, 栽植密度の増加に伴う花芽形成の低下が樹冠内相対日射の減少に起因することが示唆された.5. 花芽形成率の抑制(5%以上)が起こる栽植密度は, 各台木樹とも樹齢の進行に伴って低密度域に移行した.この移行速度はM.9台木樹に比較してM.26, M.7およびMM.106台木樹で速かった.このような花芽形成率(φ)と栽植密度(ρ)の関係は, M.9台木樹では樹齢6年生から, 他の台木樹では5年生から, 次のような逆数式によって表すことができた.1/φ=Aφρ+Bφ(4)(ただし, 0≦φ≦100, AφおよびBφは樹齢と台木の種類によって変化する係数)6. 花芽形成率(φ)は, LAI(F)が低い領域ではほぼ一定であったが, あるLAIを超えると急激な低下を示した.このようなφとFの関係は, 次のような2つの式によって近似することができた.すなわち, 0<F≦-b/2aのとき, φ=-(b2/4a)+c(5)F≧-b/2aのとき, φ=aF2+bF+c(6)(ただし, a, bおよびcは樹齢と台木の種類によって変化する係数)7. 花芽形成率の低下が始まるLAIを臨界LAI(Fφcri)と定義すると, Fφcriは次式によって与えられる.Fφcri=-b/2a(7)式(7)から計算したFφcriは, 樹齢や台木の種類に関係なく, 1.9&acd;2.1の範囲と推定された.8. Fφcriにおける個体葉面積(ucri)と栽植密度(ρcri)の関係は, 樹齢や台木の種類に関係なく, 次のような回帰式によって記述できた.ρcri=1.5×104・ucri-0.92(10)
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