園芸学会雑誌
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STS 溶液を加用したゲル状給水材の輸送中処理によるカーネーション切り花の鮮度保持と品質保持期間の延長
宇田 明山中 正仁吉野 彰川江 啓一多田 秀
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2000 年 69 巻 4 号 p. 492-496

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抄録

産地から出荷する切り花や観光農園で観光客が摘み取った切り花の鮮度を保持し, 品質保持期間を延長させるために, 0, 0.1, 0.2, 0.4, 0.8mMのSTS溶液を加用したpickle, すなわち多糖類を主成分とするゲル状給水材にカーネーション切り花をさし, 1, 3, 6, 12, 24, 48時間の湿式輸送をシミュレートした.給水材にさして輸送した切り花の吸水量は, 脱塩水につけて輸送した場合より20∿30%少なかったが, 切り花重増加割合は両者ほぼ同じで, 同程度に萎凋が抑制された.一方, 乾式輸送では切り花重が著しく減少し, 萎凋した.STS加用給水材にさして輸送したカーネーション切り花では, 乾式輸送やSTS無加用給水材にさした切り花より品質保持期間が延びた.このことから, カーネーション切り花はSTS加用給水材から銀を吸収できることが証明された.また, STS溶液処理との比較から, 品質保持期間は銀を吸収させる手段ではなく, 吸収された銀量に影響されることが明らかになった.輸送時間を6∿12時間と想定した場合, 乾式輸送での品質保持期間の2倍以上を得るには, 給水材に加用するSTS溶液濃度は0.2mMが適当と考えられた.

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