園芸学会雑誌
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リンゴ果実におけるジャスモン酸類とアブシジン酸の相互関係およびアントシアニンの蓄積に及ぼすジャスモン酸類の促進効果
近藤 悟塚田 直子新美 善行瀬戸 秀春
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2001 年 70 巻 5 号 p. 546-552

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抄録
リンゴ'つがる'果実(Malus pumila Mill. var. domestica Schneid.)中のジャスモン酸類[ジャスモン酸(JA)およびジャスモン酸メチルエステル(MeJA)]とアブシジン酸(ABA)の相互関係について検討した.満開後93日(プレクライマクテリック), 満開後112日(クライマクテリック)および満開後133日(ポストクライマクテリック)に果肉ディスクを採取し, MeJA, ABAおよびこれらとアミノエトキシビニルグリシン(AVG)の組合せを含む0.4Mマンニトール溶液中に静置した.果肉ディスク中のジャスモン酸類, ABAおよびエチレンを, 処理開始時, 24, 48および72時間後に分析した.クライマクテリックおよびポストクライマクテリック果実で, ABA処理は内生JA濃度を増加させ, そしてABAとAVGの組合せはそれを減少させた.この結果は, エチレンがABAによる内生JAの合成促進に関連している可能性を示唆している.MeJA処理は果実の発育段階に関わらず, 満開後93日から133日まで内生ABA濃度を減少させ, またAVGとの組合せも同様の結果であった.この結果は, ジャスモン酸類がエチレンとは無関係に内生ABA合成に影響する可能性を示す.プレクライマクテリック, クライマクテリックおよびポストクライマクテリックのリンゴ果実から果皮の付着した果肉ディスクを採取し, 照明下で7日間, MeJAおよびMeJAとAVGの組合せを含むB5培地上に置床し, アントシアニン蓄積に及ぼすMeJAの影響を検討した.プレクライマクテリックおよびポストクライマクテリックの果実で, MeJAとAVGの組合せはMeJAのみに比べてアントシアニン濃度をやや低下させたが, いずれも無処理に比較してアントシアニン蓄積を促進した.ジャスモン酸類はリンゴのアントシアニン生成に, エチレンの大きな影響を受けずに関連している可能性が示唆された.
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