抄録
花の香りについて, 評定者に特別な訓練を受けていない一般人を想定し, 専門用語を用いない官能評価法を設定することを目的として, 先行研究(竹内ら, 1995)では17種類の生花の香りを評価対象とした官能評価を行った.この結果から, 花の香りの官能評価尺度として16組の7段階両極尺度を設定した.本研究では, この16組の7段階両極尺度を先行研究で使用した17種類のうち14種類を含む30種類の生花の香りに対して用いた.各両極尺度の使用法における評価者間の一致性について折半相関係数と年度間相関係数を指標に用いて検討した.また各花の評価結果についても評価者間の一致性を折半相関係数により, 評価の再現性を年度間相関係数により検討した.その結果, ほぼすべての尺度において評価者間の一致性が確認された.また評価結果の評価者間の一致性と再現性についても用いた花の多くにおいて良好な結果が得られた.多次元尺度法により得られた2次元布置上の各花の位置関係においても年度間の再現性が認められた.これより先行研究で設定した評価尺度が生花の香りの評価において, 再現性, 信頼性のある評価結果が得られるという点で有効であることが確かめられた.さらに本研究で扱ったデータの範囲においては, 尺度を構成する評価用語の解釈の個人差により評価者間で使用法が異なる可能性が高いとみなされた「軽い-重い」, 「しつこい-あっさりとした」の2尺度による評価データを除くことで, 評価結果の評価者間の一致性と年度間の再現性が向上することが確認された.