抄録
Lycoris属における切花用品種の育種を目的として, 不稔種L. incarnataと可稔種L. sanguinea, L. sprengeri, L. radiata var. pumilaおよびL. aureaとの種間交雑を行った.交雑胚を受粉後20-30日目に摘出し, 500 mg・liter-1カゼイン加水分解物を添加した改変MS培地(Ma et al., 2001)で培養した.L. incarnataを母本とした4組合わせにおいて種間雑種を得たが, L. sanguinea × L. incarnataでは雑種個体を得ることができなかった.細胞学的研究により, 種間雑種個体はすべて三倍体であり, それらは母本であるL. incarnataの非還元配偶子(2n-egg)と父本の配偶子(n)との受精から形成されたものと推測された.この染色体観察に加えて, 種間雑種個体のアイソザイム分析と特性観察からも, 得られた種間雑種個体の雑種性が確認された.