園芸学会雑誌
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低温下でのキュウリの生育と光合成に及ぼす根へのスペルミジン前処理の影響
賀 利雄名田 和義橘 昌司
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2002 年 71 巻 4 号 p. 490-498

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抄録

低温下でのキュウリの生育と光合成に及ぼす内生ポリアミンレベルの影響を調べた.人工気象室(昼/夜温度28/22℃, 光強度240μmol・m-2・sec-1, 日長14時間)で, 第2本葉展開時の苗を0.5mMスペルミジン(Spd)を含む水耕培養液で2日間栽培した後, 温度を10/7℃に下げ, 無処理対照植物とともにSpdを含まない培養液で8日間栽培し, その後28/22℃に3日間戻した.その結果, Spd前処理により, 葉やチラコイド膜のSpd含量が高くなり, 低温による生育および光合成の抑制や葉緑素の減少の程度が小さくなった.また, 葉緑素蛍光(Fv/Fm), チラコイドの電子伝達活性, 炭素代謝酵素活性の低温による低下やチラコイド膜の脂質過酸化が軽減された.さらに, 低温非遭遇葉から単離したチラコイド膜にSpdを前処理することにより, その後の低温光処理による光化学系の障害が軽減された.これらの結果は, Spdには低温光障害から光合成器官を保護する機能があることを示唆する.

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