園芸学会雑誌
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エチレン非生産性形質転換カーネーションの花の老化と遺伝子発現
小杉 祐介和気 慶介岩崎 勇次郎鶴野 樹々子望月 淳吉岡 俊人羽柴 輝良佐藤 茂
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2002 年 71 巻 5 号 p. 638-642

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抄録
ACC酸化酵素(DC-ACO1)cDNAをセンス方向に発現するsACO遺伝子を導入したカーネーション(sACO-1系統)の, 花の老化, エチレン生成, およびエチレン生合成関連遺伝子の発現を調べた.sACO-1系統の切り花は老化時にエチレンを生成せず, 花の寿命が非形質転換体(NT, 対照)の1.6倍に延長した.NTの切り花では, エチレン生成の始まる実験開始4日後から, 雌ずいと花弁でDC-ACO1 mRNAの蓄積がみられた.同時に, 花弁でACC合成酵素(DC-ACS1)mRNAの蓄積も起こった.他方, sACO-1系統の切り花では, 雌ずい, 花弁の両方でDC-ACO1 mRNAの蓄積は起こらず, 花弁でのDC-ACS1 mRNAの蓄積もみられなかった.カーネーション切り花の自然老化時のエチレン生成は, 雌ずいで生成したエチレンが拡散性のシグナルとして働いて花弁に受容され, 花弁でのDC-ACO1とDC-ACS1の発現を誘導することによって自己触媒的に開始する(Shibuyaら, 2000).この知見と今回の結果から, sACO-1系統の切り花のエチレン非生産性は, sACO遺伝子が雌ずいにおいてDC-ACO1 mRNAの蓄積を阻害することが第一義的な原因と考えられた.
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