抄録
ナシにおいて, 51種類のコピア型レトロトランスポゾンの部分配列をクローニングし解析した.塩基配列を基にした系統解析の結果, 得られたレトロトランスポゾンは15のクループに大別され, ナシのゲノム中で非常に多様性に富んでいることが明らかとなった.多くのクローンは他の植物で知られているレトロトランスポゾン様配列とともにグルーピングされたが, いくつかのクローンは既知のトランスポゾンと低い相同性を示した.各グループを代表する8種類のクローンをプローブにしてサザン分析を行った結果, レトロトランスポゾンはナシ属に広く分布していた.バンドの多型は, 種間のみならず種内でも見いだされ, 過去にレトロトランスポゾンの転移が起きたこと, 及び種や品種の分化の過程において多様化が起きたことを示している.サザン分析のバンドのシグナル強度を基にしてコピー数を推定したところ, 少なくとも1000コピーが存在すると考えられた.