園芸学会雑誌
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オーストラリア野生植物 Goodenia scaevolina F. Muell. の種子発芽に及ぼす植物由来の煙と熱処理の効果
杉本 和宏 /Jonathan Lidbetter
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2002 年 71 巻 6 号 p. 770-776

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抄録
オーストラリアの野生植物Goodenia scaevolina F. Muell.の種子発芽が, オーストラリア固有の樹木, フォレストオーク(Allocasuarina torulosa)の葉から生じた煙の水溶液によって促進されることが明らかとなった.煙水溶液は, この樹種の落葉または新鮮葉25gを燃焼させて発生した煙を蒸留水1リットルに飽和させて作製した.煙水溶液の濃度を1/50に希釈して添加したMS培地で, 発芽率は最も高い値を示した.煙の効果には, 煙に含まれる成分と熱の2つの要因が考えられる.煙水溶液とともに, 種子に80℃で1∿10分間の熱処理をすることにより, 発芽率は有意に増加した.しかし, 熱処理の効果は長期間は持続せず, 処理後8週間を経た種子を用いた場合には, むしろ無処理よりも発芽率は低くなった.煙水溶液の発芽促進効果は, 発芽初期にはジベレリン酸1000ppmに類似し, 100日後には, 発芽率はジベレリン酸10ppmと100ppmとの中間の値を示した.1/50の濃度の煙培地での発芽率は, 煙水溶液作製後の8カ月間で日数が増すにしたがって高くなったことから, この間に煙水溶液に何らかの変化が生じたことが考えられた.
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