抄録
アジアハス(Nelunbo nucifera), アメリカハス(N. lutea)ならびに種間雑種を含むハナハス23品種を供試して, 開花2日後の花弁について, アントシアニン色素を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析し, 花色による品種分類との関係について考察した.赤色の花弁のアントシアニンとしてデルフィニジン3-グルコシド, シアニジン3-グルコシド, シアニジン3-アラビノシド, マルビジン3-ガラクトシドおよびマルビジン3-グルコシドが検出された.マルビジン3-グルコシドの占める割合が多かった.緑黄色品種の花弁では微量のキサントフィル類とβ-カロテンが検出された.アントシアニン組成からハナハスは4品種群に分類できた.アントシアニン色素の構成による分類と花色の関係はほぼ一致した.全アントシアニン濃度が高く5種類すべてが比較的高い濃度で含まれる場合は赤色に, 全アントシアニン濃度が比較的高いが, マルビジン3-グルコシドとマルビジン3-ガラクシド以外が検出限界以下の場合にはピンクに, また, 全アントシアニン濃度が低く, マルビジン3-グルコシドのみが検出可能の場合は爪紅に, さらに, これらの色素を全く含まない場合には白色から黄色となった.花弁のアントシアニン5種の量は明度(L*)との間に高い負の相関が認められ, a*値との間では正の相関が認められた.一方, b*値は, マルビジン3-ガラクトシドおよびマルビジン3-グルコシドとの間でのみ負の相関がみられた.以上の結果から, 花弁の色素組成により品種分類が可能であり, アントシアニンとくにマルビジン系色素の濃度は赤色系品種の赤色の濃さに反映していることが示唆された.