日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会会誌
Online ISSN : 2434-1932
Print ISSN : 2188-0077
総説
急性咽頭炎,急性扁桃炎の抗菌薬治療を考える
―薬剤耐性(AMR)菌時代の適切な抗菌薬治療―
宇野 芳史
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2020 年 8 巻 3 号 p. 184-192

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抄録

急性咽頭炎,急性扁桃炎は日常診療において頻繁に遭遇する上気道疾患の一つである.「抗微生物薬適正使用の手引き」では,原因微生物としてウイルスが大半で,抗菌薬治療の適応となる細菌感染はA群β溶血性連鎖球菌のみが重要であり,A群β溶蓮菌迅速抗原検査または細菌培養検査でA群β溶蓮菌が検出されなかった症例に対しては抗菌薬投与による治療は不要としている.また投与する抗菌薬はAmoxicillinを中心としたペニシリン系抗菌薬が第一選択としている.しかし,実際の臨床の場においてはA群β溶蓮菌感染症であってもβラクタマーゼ産生菌との混合感染などによりペニシリン系抗菌薬での除菌失敗例,重症例でペニシリン系抗菌薬の投与で効果が期待できず,他の抗菌薬(ニューキノロン系抗菌薬,第3世代セフェム系抗菌薬等)の投与が必要と考えられる症例もある.他の耳鼻咽喉科感染症と同様,急性咽頭炎・急性扁桃炎においても重症度判定及びその重症度に従った抗菌薬の選択という考え方が重要である.また投与する抗菌薬はペニシリン系抗菌薬を第一選択としつつ,他の抗菌薬の選択も柔軟に考慮する必要がある.

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© 2020 日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会
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