日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会会誌
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Print ISSN : 2188-0077
症例
上顎の歯性感染症に起因した深頸部膿瘍例
久保 良仁神前 英明大江 祐一郎中村 圭吾清水 猛史
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2020 年 8 巻 3 号 p. 259-262

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抄録

深頸部膿瘍は頸部の間隙に膿瘍を形成し,進行すると気道閉塞や敗血症,壊死性縦隔炎を生じる重症感染症である.歯原性の深頸部膿瘍は多く認められ,ほとんどが下顎歯の炎症に起因し,上顎歯由来の報告は稀である.

症例は53歳女性.左側上顎第2大臼歯の齲歯に対し感染歯の根管治療を受け,1週間後に発熱,左頬から頸部の腫脹・疼痛,呼吸苦を生じ近医を受診した.頸部CTで頸部間隙にガス産生を伴う膿瘍像を認め,深頚部膿瘍と診断され当院へ救急搬送された.同日,左側上顎第2大臼歯の抜歯,歯齦部切開による上顎洞開洞,深頸部膿瘍切開排膿術を施行した.細菌培養検査でPrevotella intermediaなど複数の菌種が検出された.ピペラシリン/タゾバクタム,クリンダマイシンによる抗生剤加療および膿瘍腔の洗浄を行い,術後13日目に軽快退院した.歯原性の深頸部膿瘍は嫌気性菌による混合感染により重症化することが多く,迅速な対応と適切な抗菌薬の使用が重要である.

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© 2020 日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会
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