2020 年 8 巻 3 号 p. 263-267
破傷風は破傷風毒素により強直性痙攣を引き起こす感染症であり,我が国では3種混合ワクチンの定期接種が開始されてから症例数は減少したものの,依然致死率が高い疾患である.
今回当院において11年間で診断された8例の破傷風症例を報告したが,いずれも中高年で発症しており,嚥下障害や開口障害を訴えていた.破傷風抗体価が高値な程,破傷風が発症したとしても臨床症状が軽度と予測していたが,重症化した症例も認められた.また喉頭ファイバー検査を施行した全症例で下咽頭の唾液貯留所見を認め,重症化した全症例に対して気管切開術が施行されていた.
以上のことから,高齢者における急速に出現した嚥下障害や開口障害を診察した場合には,必ず破傷風の可能性を想起して生活歴を再確認し,対応する必要があると考えられた.