社会主義ベトナムの農業・農村開発

抄録

後発開発途上国である社会主義ベトナムの農業・農村は, 南北差が著しい。1986年からのドイモイ=市場経済化を機に, 同国の経済政策は農業重視へと大きく転換した。農業生産は, 食糧自給の達成をうけ, 現在, 畜産, 各種工芸作物の増産等, 多様化が図られている。生産の担い手は従来の集団農場から家族経営へと転換してきてはいるが, 農業組織全般については, 解決すべき課題がなおかっ多い。市場経済化とともに拡大してきた相対的貧困を是正するべく, 同国は現在, 総合的農業・農村開発の推進をも志向している。ただし, 同政策の推進には, 開発における政治的社会的安定を維持したいとする事情もまた大きい。