農村環境は豊富な生態系の場であると同時に, 優れた景観を有し, また身近な自然として近隣住民の憩いの場であった。とりわけ子供たちにとっては, 貴重な自然体験が与えられた。しかしながら, 農村は第一義的には食糧生産の場でもあることから, 近年の合理化により大きく変貌し, 前述の要素のすべてを喪失しつつある。人手不足もその趨勢に拍車をかけるものであった。
最近, この農村のもつ価値の再評価が行われ, その保全, 復元の動向が顕著となった。市民の自発的な運動と行政の方針の転換によるもので, 多自然型河川工事, ビオトープづくり, 里山管理, グリーンッーリズム, 棚田のオーナー制などがその代表的なものである。