圃場整備を対象に, 多面的機能を含む効果の波及状況を便益帰着分析により解明した。分析の特徴は, はじめて便益帰着分析を土地改良事業に適用したことと, 先行研究における分析結果を, 相互の重複を避けつつ総合的に提示する枠組みを示したことである。分析結果から, 圃場整備の実施は, 農家のみでなく国民に広く効果が波及するが, 圃場整備による生産費用の削減がどの程度米価に反映するかがキー・ファクターであることがわかった。また, 事業計画時点における多面的機能の経済評価では, 計測し残された便益が存在する傾向がみられた。今後, 多面的機能を含めて効果の波及状況を定量的に示すことが, 土地改良法の環境配慮規定に照らして一層重要となる。