2004 年 72 巻 3 号 p. 217-221,a2
これまで, 包括的な需要調整型の水資源管理を目指す統合的水資源管理 (IWRM=Integrated Water Resources Management) は, 農民参加型灌漑管理 (PIM;Pardcipatory IrrigationManagement) とは別の概念, 問題として扱われてきた。湿潤地域を代表するモンスーン・アジアでは, 通常はきわめて低い水の希少性が著しく高まる異常な渇水時に, 水の配分と労力の賦課を適切かつ円滑に実施することが, 今も昔も水資源管理の最重要課題のひとつである。近代以前から各地で, 灌漑利水者間の調整を担ってきた「アジア風土調和型伝統的PIM」は, 今後これらの地域で求められる他部門の利水者を加えたIWRMのひとつの基本形となり得ることを提示する。