静岡県掛川市での事例研究から, 条例に基づく協定として住民主体で策定された集落土地利用計画が,「美の里」づくりを進めていくうえでの基礎には必ずしもなり得ないことを検証した。住民の中に農村景観保全の視点がないわけではないが, それは農地の利用についてフリーハンドをもちたいという個々の土地意識が表れる中で, かなり後退してしまう。しかし, そうした集落土地利用計画の策定は, 乱開発に対する不安感を取り除くなど, 少なくとも心理的な効果はもっている。そこから, コミュニティの構造変革を通して, 環境特性を活かした地域づくりへの住民の主体的な行動をいかに引き出していくかが, 地域プランナーに問われる今後の課題である。