富山県西部に位置する玄手川は, 湧水の見られる農業用排水路であり, トミヨやナガエミクリなどの水生動植物が豊富である。維持管理作業の効率化や自然生態系の保全のために, 水路底を平ブロックと枠ブロックとを交互に並べた近自然工法で施工し, 水路底に占めるコンクリートの割合は約80%となった。しかし, 玄手川の水は下流域において農業用水として使用されているため, 施工後も湧水が安定していることが, 農業にとっても生態系にとっても望ましい。そこで, 施工前後にわたり路線水収支調査を100回行い, その水収支の実態から, この近自然工法が湧水に影響を与えなかったことを明らかにした。